市況研究社

原油相場 2019年4月23日(火)

米政府は4月22日、イラン産原油の禁輸措置について、中国、インド、トルコ、韓国、日本、イタリア、ギリシャ、台湾の8カ国・地域に対する適用除外措置を打ち切ると発表し、5月1日までに輸入を全面停止するよう求めた。

わが国の場合は、石油連盟の月岡隆会長(出光興産会長)が3月20日の記者会見で「4月にイランで原油を積み込むのは困難」と述べたように、元売り各社はとっくにイラン原油の船積みを停止している。「適応除外の期間延長はない」とみて対応済みであり、わが国石油会社の原油調達業務に「影響はない」と思います。

イランの重要性

昨年(2018)5月8日、トランプ米大統領は「イラン核合意からの離脱」した。

米国政府は昨年8月7日と11月5日の2段階に分けて対イラン制裁を再開した。

そして、現在に至るまで何度も制裁対象を拡大し、特定指定国民(SDN)リストを更新してきた

米国政府は各国に対し「最強のイラン制裁」に従うように求めている。

すでに数多の企業がイランから撤退を余儀なくされ、イラン原油の購入を取り止めることになった。

しかし、その一方で、各国の政府レベルでは、米国の圧力が強化される中にあっても、イランとの関係をいかに維持していくべきか、ということが関心の的となっている。

その理由の第1は、わが国を含めて、多くの国が「イラン核合意」を支持していること。米国とイスラエル、そしてサウジアラビアなど、一部の国を除けば、「イラン核合意」は国際社会のコンセンサスです。

第2には、イランの持つ天然資源、8,000万人という人口、その地理的な条件、および地政学上の重要性から、イランとの関係に利益を見出す国が多いこと。中国の「一帯一路」構想でも、イランは重要な地位を占めている。インドの中央アジア構想でも、イランとの関係は重要です。

イランは、2020年の米大統領選挙まで、辛抱する可能性が高い。

建前と実利の複雑さ

今回、米政府が発表したイラン原油の禁輸措置(適用除外の打ち切り)は、実質的に「中国」「インド」「トルコ」「韓国」が焦点です。

これらの国がどう動くのかは不透明です。一方、トランプ米大統領は2020年が選挙です。

●中国

中国も「建前」と「実利」を使い分けてくる国です。

建前では「米国の求めに応じる形でイランからの原油輸入を削減することはない」としています。中国政府・外交部(中国外務省)の耿爽報道官は昨日22日、「米国が国の管轄を超えて一方的に制裁を実施することに中国は一貫して反対してきた」と指摘。中国とイランの協力はオープンかつ透明、妥当、正当であり、尊重されるべきだと述べて、中国政府は同国企業の正当な権利・権益を守ることにコミットしており、国際エネルギー市場の安定に積極的かつ建設的な役割を果たす用意があると続けた。

中国とイランやサウジアラビアの関係について(1)中国はイランとサウジの間で、正常なエネルギー資源協力を保持している、(2)中国は一貫して明確に、一方的制裁と「ロングアーム管轄」には反対している、(3)中国は自らの経済発展の必要性にもとづき、自主的にエネルギー資源についての対外政策の方向性と規模を確定する――と述べ、米国の求めには応じない自国政府の方針を、改めて明らかにした。 「ロングアーム管轄」とは本来、民事訴訟についての米国の法概念で、裁判所が所管外の場所の被告に対しても判決が有効とする考え方。国際政治では、自国の決定に他国を従わせることを意味し、中国は強く反対しつづけている。

●中国の「一帯一路」構想とイラン

カザフスタン、中国、ウズベキスタン、トルクメニスタン、イランの鉄道管理当局代表者は4月4日、カザフスタンのアルマトイで国際貨物輸送の発展に向けた取り組みに関する会合を開いた。会合では、中国とイランを結ぶ鉄道コンテナ輸送ルートにウズベキスタンが加わることが決定し、輸送期間・ルートの短縮などが図られる見通しになった。

会合を主催したカザフスタン鉄道の発表によると、現在、中国からイラン向けコンテナ貨物は(ウズベキスタンを迂回し)カザフスタンのボラシャク、トルクメニスタンを経由してイランに輸送されており、今回、ウズベキスタンが同輸送に参加することで輸送ルートが短縮され、輸送日数が大幅に削減される。同ルートの輸送距離は1万キロを超え、中国東部(沿岸部)からイランまでの輸送期間は12日で、海上ルートの2分の1とされる。

また、中国はイラン原油をミャンマーのチャオピュー港から陸揚げし,パイプラインで中国南部雲南省の昆明まで運び,そこで精製するというルートを開こうとしている。

但し、中国の実際の行動は確かめる必要があります。中国は「建前」と「実利」を使い分けてくる国であるため、イラン問題を米中間の貿易協議の「取引材料」にする可能性もあるからです。

●インド

インドのスワラジ外相は昨年(2018)5月28日、国連による制裁措置のみを順守し、米国による対イラン制裁には従わない方針を示したことがある。

インドはこれまで長年にわたり、イランと良好な関係を保っている。

しかし、インドは昨年11月5日以降、経済制裁によりその輸入の削減に踏み切った。独立系のリライアンス工業(RIL)やエッサール石油などは経済制裁が発動される以前からイラン産原油の輸入をほぼ停止した。インドでも、各社によって、建前と実利のせめぎあいがあります。

インド政府は12月上旬、イランとの間でイラン産原油の輸入の支払いに関する覚書(MoU)に調印した。この覚書によると、インドの各石油会社はインドUCO銀行を通じて国営イラン石油会社(NIOC)の口座に振り込むという。イラン産原油を輸入するインド国営石油(IOC)、バハラット石油公社(BPCL)、ヒンドスタン石油公社(HPCL)などインドの国営精製企業は、UCO銀行を通じてNIOCの口座に支払い資金を積み立て、イランはその半分の資金の使用を認められる。その資金はインドから輸入される食物、薬品や医療器具などの支払いに充てられる。

●インドによるイランのチャバハール港開発事業

インディア・ポーツ・グローバル(IPGPL、インド政府系港湾開発会社)は、イランのチャバハール港の開発を急いでいる。インドは、アフガニスタンや資源の豊かな中央アジアとの貿易を拡大しようとしている。

インドは、イランのチャーバハール港経由でアフガニスタンに至る物資輸送ルートを開発し、パキスタンを回避してアフガニスタンに到達することを目標にしている。

米国のポンペオ国務長官もこれを認めた。

昨年(2018)11月6日、米国のポンペオ国務長官は、インド主導のイラン・チャバハール港開発について、アフガニスタン経済への影響を考慮し、制裁対象から外すことを了承した。米国務省が2018年11月6日に明らかにした。港湾開発のほか、同港からアフガニスタンに伸びる鉄道の建設や、食料や医薬品など制裁対象とならない物品のアフガニスタンへの出荷が容認される。さらに、アフガニスタンは今後もイランから石油製品の輸入を継続することが認められる。米国務省の報道官は「アフガニスタンの成長や人道支援を後押しすることが目的」と説明した。トランプ政権には、こうしたご都合主義や支離滅裂さがあります。

●EU

イラン産原油をロシアが引き取り、ロシアが精製した石油製品をEUが輸入し、代金はEU製品でイランに支払うという仕組みを検討したことがある。(2018年9月26日)

実際の推移を見る必要があります。