市況研究社

原油相場 2019年11月22日(金)

(1) 当社では、当面の原油は”レンジ相場”と想定しています。

ブレント原油期近で言えば、上は64-65ドル、下は57-58ドルのレンジです。本年2~4月の行き過ぎた高値を5~6月相場で是正したあとは、当面火を噴くような「上昇相場」や 奈落に落ちるような「下降相場」はなく、レンジで揉み合う可能性が高いとお伝えしてきました。

(2) ここ1週間は1ドル幅の高下を連日繰り返しています。

先週11月15日(金)以降は連日、1ドル幅を超える高下を繰り返しています。ブレント原油期近の想定レンジ、上は64-65ドル、下は57-58ドルを超えて動いたわけではない。想定レンジの範囲内で、他市場とは異なるわけのわからない運動が続いています。この点について、できるかぎり実証に基づいて究明したいと思います。

サウジアラムコ新規株式公開(IPO)前の相場

昨日11月21日(木)の原油相場で、ロイターなどの記事を読んでいると、当初は12月5-6日に予定しているOPEC総会絡みで(ⅰ)ロシアが減産に協調し、(ⅱ)OPECとロシアは来年(2020)6月まで減産を続けることが「買い要因」としていた。その後、原油相場がさらに反発すると、(3)米中貿易協議の進展期待を理由付けに加えた。しかし、これらは後付けの講釈です。

●米国の原油増産 日量1330万バレルへ

米国の原油生産は本年(2019)9-10月から来年(2020)5月にかけて増加する。来年(2020)4-6月は日量1330万バレル台に拡大する見通しです。国際的に来年4-6月は原油在庫が増える可能性が高い。その分、OPECやロシアは減産継続で対応するというのが現状の動きです。

振り返って今から3年前、2016年12月10日にOPEC(石油輸出国機構)とロシアが協調減産に合意し、割当枠を策定したとき、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「米国のシェール・オイル増産が2015-2016年で頭打ちになった」と思い込み、「米国シェール・オイル増産に歯止めがかかったのでサウジアラビアがロシアと強調して減産すれば価格支配権を奪回できる」との思惑を抱いた。サウジアラビアは、米国原油生産が2015年から2016年に後退したのを見て、米国シェール・オイルの増産に歯止めがかかったと思い込んだ。サウジアラビアとロシアが減産すれば「国際需給は引き締まる」と展望し、2016年12月の協調減産を策定した。2016年12月の米国の原油生産は「日量879万8千バレル」、前年(2015)実績から後退していた。

しかし、実際には、米国の原油生産は拡大し、来年(2020)4-6月には「日量1330万バレル台」になる見込み。OPECの減産分など吹き飛ばしています。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の甘い読みは、2015年3月のイエメン侵攻でも、OPEC減産でも、サウジアラムコの新規株式公開(IPO)でも、昨年(2018)のカショギ氏殺害事件でも、さまざまなところで深刻な結果をもたらしている。

●プーチンのコメント

ロシアのプーチン大統領は先週11月14日、サウジアラビア(ムハンマド・ビン・サルマン皇太子)は「サウジアラムコ」の新規株式公開(IPO)を控え、OPECと非加盟国の協調減産について厳しい姿勢で臨んでいるとコメントしていた。

プーチン大統領は、「OPECとは非常に建設的な対話を行っている」、「サウジアラビアの減産合意に向けた厳しい姿勢はアラムコのIPOに関係するものであることを理解している」と語った。ロシアはサウジアラビア政府の立場を尊重し、OPECとの連携を維持し、協力は減産だけにとどまらないと述べた。

ロシアのプーチン大統領は先週、サウジアラビアにお付き合いし、連携を維持すると表明していた。協力は減産だけにとどまらないと述べていた。昨夜のニュースで、初めて聞く話ではない。

尚、ロシアの原油生産は10月、日量1123万バレルで、OPECとの協調減産合意に基づく生産枠「日量1117万─1118万バレル)を僅かに超えていた。ロシアのノバク・エネルギー相によると、ロシアは今年の産油量を原油換算で5億5600万-5億6000万トン(日量1117万-1125万バレル)とする計画。同相は記者団に対し、ロシアはコミットメントを堅持すると述べた。サウジアラビアの立場を尊重する意味だろうと思います。

●サウジアラムコの新規株式公開(IPO)

サウジアラビアとロシアなどは12月5日にウィーンで会合を開き、協調減産などを協議する。それと同時に、サウジアラビアは同じ日に国営石油会社サウジアラムコの国内新規株式公開(IPO)を前に公開価格を決定する。上場は12月半ばとみられ、その時点での原油価格がIPOの鍵になる。

11月情勢を分析するなかで当社が見逃していたことは、サウジアラビアそしてムハンマド・ビン・サルマン皇太子の「サウジアラムコ」IPOに賭ける必死さを斟酌してこなかったと点だと反省しています。ロシアのプーチン大統領はそれがわかっていて、「サウジアラビアの減産合意の厳しい姿勢」に言及した。

サウジアラビアは、国営石油会社「サウジアラムコ」の新規株式公開(IPO)の評価額目標について、ムハンマド皇太子は「2兆ドル」していたが、同社が11月17日に設定した公開価格の仮条件レンジに基づくと、企業価値は最大で「1兆7000億ドル」にとどまった。同社はまた、株式の1.5%を売り出すと決定しており、当初見込まれていた2%を下回った。11月17日に更新された目論見書によると、仮条件は1株30-32リヤル。

「サウジアラムコ」は12月5日に最終的な条件とバリュエーションを明らかにする。米国とオーストラリア、カナダ、日本では公募を行わない。上場日はまだ発表されていない。応募締め切りは、個人投資家が11月28日、機関投資家が12月4日。

今回12月5-6日に予定しているOPEC総会とロシアなど非加盟国との協調減産は、「サウジアラムコ」の新規株式公開(IPO)と重なっています。サウジアラビアとムハンマド・ビン・サルマン皇太子にとっては、将来を左右する重圧を感じながら、できることはなんでもやっている可能性が高い。

●当社の立場と意見

今週11月18日(月)の「日報」で、原油高に追随する市場人気の背景として4つほど言及したが、「サウジアラムコ」のIPOはそれらより重要な要素として、先頭に持ってこなければならなかったと思います。

<11月18日の「日報」で言及した思惑人気
(ⅰ)「米中摩擦が和らげば景気に追い風になるとの見方が背景にある。」
(ⅱ)「主要株価指数がするすると最高値を更新するなか、相場の上昇から取り残されるとの恐怖が投資家の背中を押している。運用成績でライバルに後れを取れない機関投資家は上昇相場に乗らざるをえない。」
(ⅲ)「相場上昇の原動力となっている"米中合意近し"の知らせ。米国が12月に予定する制裁関税"第4弾"の見送りだけでなく、米中がすでに発動済みの追加関税を撤廃するとの期待も高まっている。」
(ⅳ)「米連邦準備理事会(FRB)の低金利政策が支えとなり、相場の大幅な調整を予想する声はほとんどない。」

こうしたことよりも、当面の原油市場では「サウジアラムコ」のIPOが重要な要素になっている可能性が高い。

「サウジアラムコ」のIPOに向けてさまざまな要因が働いている可能性が高い。サウジアラビアにとっては、自らの将来がかかっている。12月5-6日、OPEC総会、OPECと非加盟国の減産合意、そして「サウジアラムコ」の新規株式公開(IPO)に向けた相場です。12月5-6日に向けてさまざまな要因が働いている可能性が高い。

OPEC総会、OPECと非加盟国の減産合意、そして「サウジアラムコ」の新規株式公開(IPO)・・・12月5-6日に向けてさまざまな要素を予想するのは難しいので、レンジ相場と想定してなすがままに推移を見守ります。

当社では、原油相場の当面のレンジは据え置きます。ブレント原油期近で言えば、上は64-65ドル、下は57-58ドルのレンジ相場と想定しています。