市況研究社

原油相場 CHS副社長のインタビュー

【2019年12月20日(金)】 今朝、なにげなく読んだなかで、最も共感し、同意したのは、全米最大の農協組織「CHS」の国際穀物販売および再生可能燃料担当副社長とのインタビュー記事でした。

CHSの国際穀物販売および再生可能燃料担当副社長John Griffith氏の意見を紹介しながら、本日の要点を整理したいと思います。

米中貿易協議 第1段階の合意

米中貿易協議の第1段階の合意は(ⅰ)米国は中国に対し、現行の、約3600億ドル相当の中国製品に課されている関税率を半分に引き下げる。(ⅱ)さらに米国は、12月15日に発動予定の1560億ドル相当の製品に対する対中追加関税の発動も見送る。(ⅲ)中国は米国農産物を「400-500億ドル相当購入する」などと伝えられた。

CHSのJohn Griffith氏の意見

中国が米国農業生産物を買うということだが(ⅰ)何を買うのか? (ⅱ)どれほど買うのか? (ⅲ)どの程度の期間で買うのか? 不透明である。

そして、そうしたことよりも、米国と中国が関税合戦でやりあっているあいだに国際穀物市場の流れが変わってしまった。米中貿易協議の第1段階が合意したからといって、国際農産物市場を以前の状態に、時計を巻き戻すことができると思うのは難しい。

CHSの副社長が12月19日(木)、ロイターのインタビューで何度も強調したのは「米中貿易協議で関税合戦をしているあいだに世界の農産物の需給構造が多大な変化をたどり、それはこのあとも続く可能性があり、以前の状態には戻らない」ということであった。

米中の貿易紛争は、ブラジルなどが、世界の輸出市場における米国のシェアを浸食することに拍車をかけた。それは、これまで米国が供給していた市場であたらしい供給元が台頭し、あたらしい取引相手に取って代わられたことを意味する。そうした国際穀物のシフトは、何年も続く可能性がある。

彼は「That is now the new world.」と述べた。

当社では、石油市場でも同じと分析しています。

OPECプラスの減産

サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)加盟国と、ロシアなど非加盟産油国は12月6日(金)、来年2020年1~3月末まで日量50万3,000万バレルの追加減産を決めた。これによって「OPECプラス」の減産幅は「日量170万バレル」となった。

しかしながら、サウジアラビアとロシアが2016年以降、協調減産を繰り返しているあいだに、米国の原油生産は「日量1300万バレル近傍」に拡大した。石油精製施設の新設/増設は中国などアジアで拡大した。「That is now the new world.」です。

米国の原油生産(単位:1日あたり バレル)
     2019年  2018年  2017年  2016年  2015年
12月   1290万  1204万   997万   880万   926万
11月   1288万  1200万  1007万   890万   932万
10月   1275万  1163万   965万   883万   940万
09月   1246万  1150万   951万   853万   948万
08月   1240万  1136万   925万   868万   942万
07月   1182万  1089万   924万   865万   944万
06月   1206万  1065万   911万   865万   935万
05月   1211万  1046万   918万   882万   947万
04月   1212万  1051万   910万   887万   966万
03月   1189万  1050万   916万   909万   959万
02月   1167万  1028万   910万   906万   951万
01月   1186万  1002万   886万   920万   938万

CHSの国際穀物販売および再生可能燃料担当副社長John Griffith氏が言うように、世界の需給構造が多大な変化をたどり、それはこのあとも続く可能性があり、以前の状態には戻らない。あたらしい供給元が台頭し、あたらしい取引相手に取って代わられることを意味する。

OPECの減産は、アジア需要を米国原油や中南米原油に多角化させる。韓国は近年、OPECおよび中東産油国に対する依存度を大幅に低下させてきた。そして、本年(2019)は米国と中国が貿易紛争を続けるなかで、韓国がアジア最大の米国原油の顧客になった。

米国の原油生産と輸出は来年(2020年)もさらに拡大する。われわれが学校で習った世界とは異なっているので、われわれの頭も「アップデート」しておく必要があります。データを下に整理します。

米国の原油増産

Crude Oil Domestic Production (単位:1日あたりバレル)
1日あたり原油生産       前年同期
12/07-12/13(19) 1280万0千  12/08-12/14(18) 1160万0千
11/30-12/06(19) 1280万0千  12/01-12/07(18) 1160万0千
11/23-11/29(19) 1290万0千  11/24-11/30(18) 1170万0千
11/16-11/22(19) 1290万0千  11/17-11/23(18) 1170万0千
11/09-11/15(19) 1280万0千  11/10-11/16(18) 1170万0千
11/02-11/08(19) 1280万0千  11/03-11/09(18) 1170万0千
10/26-11/01(19) 1260万0千  10/27-11/02(18) 1160万0千
10/19-10/25(19) 1260万0千  10/20-10/26(18) 1120万0千
10/12-10/18(19) 1260万0千  10/13-10/19(18) 1090万0千
10/05-10/11(19) 1260万0千  10/06-10/12(18) 1090万0千
09/28-10/04(19) 1260万0千  09/29-10/05(18) 1120万0千
09/21-09/27(19) 1240万0千  09/22-09/28(18) 1110万0千
09/14-09/20(19) 1250万0千  09/15-09/21(18) 1100万0千
09/07-09/13(19) 1240万0千  09/08-09/14(18) 1090万0千

米国の原油輸出

米国原油の輸出はおおざっぱに前年同期比 +100万バレル増。来年はさらにアジア向けが拡大します。

Weekly Exports (単位:1日あたりバレル)
原油輸出量(1日あたり)     前年同期
12/07-12/13(19) 363万3千  12/08-12/14(18) 232万5千
11/30-12/06(19) 340万0千  12/01-12/07(18) 227万4千
11/23-11/29(19) 313万5千  11/24-11/30(18) 320万3千
11/16-11/22(19) 348万0千  11/17-11/23(18) 244万2千
11/09-11/15(19) 302万7千  11/10-11/16(18) 196万9千
11/02-11/08(19) 263万3千  11/03-11/09(18) 205万0千
10/26-11/01(19) 237万1千  10/27-11/02(18) 240万5千
10/19-10/25(19) 332万7千  10/20-10/26(18) 248万5千
10/12-10/18(19) 368万3千  10/13-10/19(18) 218万0千
10/05-10/11(19) 324万8千  10/06-10/12(18) 178万2千
09/28-10/04(19) 340万1千  09/29-10/05(18) 257万6千
09/21-09/27(19) 286万7千  09/22-09/28(18) 172万3千
09/14-09/20(19) 298万3千  09/15-09/21(18) 264万0千
09/07-09/13(19) 317万5千  09/08-09/14(18) 236万7千

米国の原油輸入

米国の原油輸入量は、おおざっぱに前年同期比-100万バレル減です。

米国の原油輸出が前年同期比+100万バレル増、原油輸入が同-100バレル減で推移するとき、世界のバランスシートは「前年比 200万バレル」の影響を受ける。米国の原油増産は、OPECプラスの減産幅より大きなインパクトです。

Weekly Imports (単位:1日あたりバレル)
原油輸入量(1日あたり)     前年同期
12/07-12/13(19) 657万9千  12/08-12/14(18) 742万3千
11/30-12/06(19) 688万7千  12/01-12/07(18) 739万3千
11/23-11/29(19) 598万9千  11/24-11/30(18) 721万9千
11/16-11/22(19) 619万0千  11/17-11/23(18) 816万2千
11/09-11/15(19) 597万2千  11/10-11/16(18) 755万4千
11/02-11/08(19) 575万0千  11/03-11/09(18) 745万2千
10/26-11/01(19) 607万7千  10/27-11/02(18) 753万9千
10/19-10/25(19) 669万7千  10/20-10/26(18) 734万4千
10/12-10/18(19) 585万7千  10/13-10/19(18) 767万8千
10/05-10/11(19) 629万5千  10/06-10/12(18) 761万5千
09/28-10/04(19) 622万4千  09/29-10/05(18) 739万7千
09/21-09/27(19) 629万1千  09/22-09/28(18) 796万5千
09/14-09/20(19) 637万8千  09/15-09/21(18) 780万2千
09/07-09/13(19) 705万0千  09/08-09/14(18) 802万4千

米国の原油処理量

米国原油の増産が続くなかで、本年(2019)のもうひとつの特徴は<米国製油所の原油処理量の前年割れ>です。

本来であれば、米国製油所は秋季メンテナンスのあと、11月から12月は稼働率が上昇し、冬季需要の原油処理量が増加するのが普通です。ところが本年は1-3月期から米国製油所の原油処理量が減少しており、前年割れが続いています。その一方で、ガソリンなどの石油製品在庫は前年同期よりも潤沢です。

U.S. Refinery Net Input of Crude Oil (単位:1日あたりバレル)
1日あたり原油処理量       前年同期
12/07-12/13(19) 1656万2千  12/08-12/14(18) 1740万8千
11/30-12/06(19) 1659万7千  12/01-12/07(18) 1743万6千
11/23-11/29(19) 1679万8千  11/24-11/30(18) 1748万7千
11/16-11/22(19) 1633万4千  11/17-11/23(18) 1755万3千
11/09-11/15(19) 1643万5千  11/10-11/16(18) 1685万5千
11/02-11/08(19) 1591万6千  11/03-11/09(18) 1643万2千
10/26-11/01(19) 1576万1千  10/27-11/02(18) 1640万8千
10/19-10/25(19) 1599万8千  10/20-10/26(18) 1641万7千
10/12-10/18(19) 1586万5千  10/13-10/19(18) 1626万8千
10/05-10/11(19) 1543万6千  10/06-10/12(18) 1631万6千
09/28-10/04(19) 1565万6千  09/29-10/05(18) 1623万9千
09/21-09/27(19) 1601万7千  09/22-09/28(18) 1659万1千
09/14-09/20(19) 1651万3千  09/15-09/21(18) 1651万4千
09/07-09/13(19) 1670万7千  09/08-09/14(18) 1741万5千

That is now the new world.