市況研究社

原油相場 売るところではない

更新日: 2020年3月18日(水)

われわれが対象にしている原油や穀物は3月9日以降、ほぼ連日のように、約定新安値(一代安値)を更新して下げている。

今朝の「日報」を準備するなかで、米国現地3月17日(火)の「米10年債」まで一段安に下げているのを見ると、ファンドの建玉整理と現金化が価格形成のパターンを歪めていると感じました。ファンドは損失がひろがる商品だけでなく、利が乗っている商品でも建玉整理を強いられている。

Daily Treasury Yield Curve Rates
       1mo 3mo 6mo 1yr 2yr 3yr 5yr 7yr 10yr 20yr 30yr
03/17(20) 0.12 0.19 0.24 0.30 0.47 0.54 0.66 0.91 1.02 1.45 1.63
03/16(20) 0.25 0.24 0.29 0.29 0.36 0.43 0.49 0.67 0.73 1.10 1.34
03/13(20) 0.33 0.28 0.38 0.38 0.49 0.58 0.70 0.89 0.94 1.31 1.56
03/12(20) 0.41 0.33 0.37 0.39 0.50 0.58 0.66 0.82 0.88 1.27 1.49
03/11(20) 0.42 0.42 0.40 0.40 0.50 0.58 0.66 0.78 0.82 1.13 1.30
03/10(20) 0.57 0.44 0.43 0.43 0.50 0.58 0.63 0.73 0.76 1.16 1.28
03/09(20) 0.57 0.33 0.27 0.31 0.38 0.40 0.46 0.56 0.54 0.87 0.99

原油の「市場間の価格差」や「限月間の価格差」をみても、3月9日~3月17日には大きな変化をたどっている。

今朝3月18日(水)は売るところではないと考えます。これからお伝えすることは一つの作業仮説のようなものです。ご自身が独自に判断されることをお勧めします。

3月9日~3月18日の新安値更新について

「昨年(2019)12月~本年(2020)2月」は特異な思惑相場であった。それは「2月12日~2月21日」に頂点に達し、一挙に瓦解した。原油下げは、以下のように推移した。

原油の下げ幅
ブレント原油 1月8日高値  3月9日安値 3月17日安値  下げ幅
2020年03月限  71.75
2020年04月限  70.99
2020年05月限  70.25  →  31.02 →  28.50  -41.75ドル
2020年06月限  69.49  →  31.74 →  30.17  -39.32ドル
2020年07月限  68.66  →  32.58 →  31.70  -36.96ドル
2020年08月限  67.95  →  33.43 →  33.01  -34.94ドル
2020年09月限  67.32  →  34.10 →  34.11  -33.21ドル
2020年10月限  66.70  →  34.77 →  34.97  -31.73ドル
2020年11月限  66.15  →  35.42 →  35.71  -30.44ドル

「昨年(2019)12月~本年(2020)2月」の思惑相場は「2月12日~2月21日」にピークをつけた。その当時の市場人気を3月3日付けの記事でまとめたのが「日本経済新聞」の三田敬太氏であった。

三田敬太氏の主張
(1)円相場は日米金利差に反応していない
(2)円相場は株価と連動している
(3)1ドル=107円台が円高の上限
(4)米利下げは、日米金利差の縮小よりも株価下支えを通じて、円安要因になる
(5)株買いと円売りが連動する

昨年(2019)12月以降の買い策動は「2月12日~2月21日」に頂点に達し、一挙に瓦解した。そして、3月9日以降は、価格形成の構造と秩序が変わってきた。原油、銅、穀物だけでなく、株や金(ゴールド)、あらゆる市場でボラティリティの高さと相場下落が顕著になった。

米連邦準備制度理事会(FRB)は3月3日、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を「1.00─1.25%」に引き下げ、3月15日にも「0-0.25%」へ切り下げたが、「3月9日~今朝3月17日」の米債券市場は米国債が売られ、金利が上昇している。FRBは政策金利の緊急利下げを繰り返したが、米長期債の指標(10年債)も短期債の指標(2年債)も売られて利回りが上昇している。今朝の米債券市場はその典型であった。

株が下げ、原油が下げ、大殺られになっているファンドは3月9日以降、「金」(ゴールド)や「米国債」まで売っている。

なぜか?

ファンドは昨年(2019)12月~本年(2020)2月の買い策動が破綻し、株の買いで殺られ、原油の買いで殺られ、穀物でも殺られている。ファンドは大殺られになり、解約・返金に備えて現金(米ドルキャッシュ)を用意しなければならないので、損失が出ている市場で建玉を手仕舞いするだけでなく、利が乗っている市場や商品でも手仕舞いを強いられる。

ファンドは株や原油の買いが大きい。これらが総殺られになると、米ドルキャッシュを確保するためにまだ利が乗っている「米国債」や「金」(ゴールド)でも手仕舞い売りを余儀なくされる。

そう考えることによって、3月9日以降のボラティリティの高さと価格形成の構造が見えてくるのではないかと思います。当社の判断としては、そういう段階が進展してきたところでは、普通のお客さん、普通の投資家は、もう売ってはならないと思います。

石油や穀物のファンダメンタルズ

新型コロナウイルスによって、移動が制限され、自宅待機や自粛が求められると、ガソリンやジェット燃料など、燃料油需要が蒸発する。

石油市場では、需要蒸発によって、シンガポールの石油製品のクラックも蒸発している。シンガポール・ガソリンやケロシンの精製マージンがない。

但し、こうした足もとのクラック崩壊が将来の価格形成の基準になるものではないので、その推移を調べています。

シンガポール・ガソリンのクラック
        オマーン   ガソリン     ガソリン
日付       原油     GL92-SIN     クラック
3/17(20)   31.51
3/16(20)   31.38     30.80      -0.58
3/13(20)   34.79     36.85      +2.06
3/12(20)   33.73     39.40      +5.67
3/11(20)   35.39     42.65      +7.26
3/10(20)   34.40     43.60      +9.20

シンガポール・ケロシン(ジェット燃料)の
        オマーン  Jet/       ケロシン
日付       原油    Kerosine     クラック
3/17(20)   31.51
3/16(20)   31.38     36.60      +5.22
3/13(20)   34.79     42.69      +7.90
3/12(20)   33.73     41.07      +7.34
3/11(20)   35.39     46.15      +10.76
3/10(20)   34.40     45.40      +11.00

今朝の「日本経済新聞」10面には「欧州向け大幅8ドル値引き/サウジ原油 ロシアとの価格競争」との客員編集委員脇祐三氏の作文が掲載されています。しかし、サウジ4月タームの調整項値下げは3月9日(月)の当社「日報」でお伝えたことです。

原油下げや穀物下げが続くと、市場人気は「弱材料」を求め、それをしゃぶり尽くそうとする。本日3月18日の「日本経済新聞」は、3月9日に伝えるべきものをあらためて掲載し、弱人気に迎合したように思います。

現在の原油価格やトウモロコシ価格は、ファンダメンタルズの要素だけでなく、3月9日以降は「各市場の取組内部要因」のテクニカルな要素も加わっている。米ドルキャッシュを確保しなければならないので、損失が出ている市場で建玉を手仕舞いするだけでなく、利が乗っている市場や商品でも手仕舞いを強いられている。3月9日以降の価格形成の構造を将来の基準にすることはできない。

●米国は「1兆ドルの経済支援」へ

原油でも、穀物でも、今週の市場人気が焦点にしているのは、新型コロナウイルス対策として米国が用意している「1兆ドルの経済支援」です。

今朝の報道は下記の通り。赤字が重要な箇所です。

「ムニューシン財務長官は3月17日、与野党の議会指導部と相次いで会談し、大型の景気刺激策の詰めの協議に入った。同長官は「1兆ドルの経済対策を提案した。極めて大きな景気刺激策となる」と記者団に述べた。トランプ大統領は労使が負担する給与税の免除を提案。新型コロナで売上高が急減する航空会社や宿泊業などの資金支援も盛り込む。実現すれば連邦政府の年間歳出(4.7兆ドル)の2割を超える異例の大型景気対策となる。

ムニューシン長官は3月17日の記者会見で現金給付構想を明らかにした上で"2週間以内に実施したい"とも述べた。規模や手法などは議会側と詰める。新型コロナで影響を受ける外食産業や宿泊業などは、時給労働者が少なくない。店舗などの一時閉鎖で無給休暇を迫られるケースがあり、米政権と議会に現金給付によって内需の急減を避けたい思いがある。

「トランプ大統領は社会保障財源である給与税を、20年中は免除するよう議会に提案してきた。同税は労使それぞれが給与の6.2%を納税する仕組みで、税収は年1兆ドル強と全歳入の3分の1を占める。今春から免除すれば減税規模は8千億ドルと極めて大きいが、給与税は収入の断たれた失業者や休業者には減税効果が及ばず、緊急対策としての効果に疑問もある。

「米議会は3月6日、ワクチン開発などに充てる83億ドルの緊急補正予算を成立させた。16日には下院で新型コロナの検査無償化などを盛り込んだ100億ドル規模の「経済対策第2弾」を可決済みだ。ホワイトハウスと議会は「第3弾」として家計や企業への大型の景気対策を検討。米航空業界は16日、連邦政府に500億ドルを超す支援を要請していた。

米国は、2週間以内に、現金給付の可能性がある。現在、米下院でその法案を作成中です。その推移によっては市場人気が動く可能性がある。

本日18日(水)の新安値は売るところではないと思います。