ブラジルのトウモロコシ生産
更新日: 2023年3月12日
(ⅰ)ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)
(ⅱ)市況研究社日報(穀物)のページ
予備概念
ひと昔前は、国際穀物市場で米国のシェアが圧倒的であった。現在は、ブラジル、アルゼンチンなど南米4カ国やウクライナなど黒海沿岸諸国の生産拡大で国際市場の構造変化が進展している。米中貿易協議で関税合戦をしているあいだに世界の農産物の需給構造は多大な変化をたどってきた。それはこのあとも続く可能性があり、あたらしい供給元が台頭し、あたらしい取引相手に取って代わられる。
ブラジルでは年間を通じて、同じ土地に2つの作物を栽培できる。夏に大豆を栽培し、大豆収穫後に第2期作トウモロコシを作付けする。中国の大豆需要が増大するにつれて、ブラジルの大豆作付面積が拡大したが、それは同時に、大豆を収穫後の第2期作トウモロコシの作付面積も拡大させた。
ブラジルのトウモロコシ作付けには1期作(primeira safra)と2期作(segunda safra)がある。前者は「夏作」(safra de verão)と呼ばれ,ブラジル全土で9月~12月に作付けされ,翌年の2月~5月に収穫される。とくに南部では作付け時に前年度の大豆価格とトウモロコシ価格を比較考量して作付面積を決める。2期作トウモロコシは「冬作」(safra de inverno)や「サフリーニャ」(safrinha) と呼ばれ,主として中西部において大豆収穫後の2月~3月に作付けされ,同年の6月-7月に収穫される。近年、ブラジルのトウモロコシ作付面積および生産高の主体になっているのは2期作トウモロコシ(サフリーニャ)である。
ブラジルのトウモロコシ輸出は通常、2期作トウモロコシの収穫後、7月~12月の6カ月間に月平均400万~600万トンのペースで輸出される。
ブラジルの最大のトウモロコシ生産地であるマットグロッソ州では近年、大豆収穫後の第2期作として綿花を選択する農家もある。しかし、ブラジル生産者の多くは綿花生産に必要な機械や資本を持っていない。多くの生産者は、トウモロコシの高い収益性、商品化のしやすさ、綿花に比べて投入資金の少なさ、そして大豆と共通した生産機材を使うことができることで、大豆の収穫後は第2期作トウモロコシを選択する。
ブラジルの1期作トウモロコシの収穫量が想定より減少する場合は、ブラジル国内の供給がタイトになり、ブラジル国内の畜産業、養鶏業で飼料用として必要とするトウモロコシはアルゼンチンやウルグアイから輸入しなければならなくなる。
ブラジルは、中国、インド、米国に次ぐ世界で第4番目の肥料消費国であり、その約80%を輸入している。トウモロコシ生産に不可欠の窒素肥料の76%、リンの55%、カリウムの94%が輸入に依存している。肥料の輸入価格が高騰し、ブラジル生産者が十分な肥料を調達できない場合、または高騰する生産コストを考慮して肥料の投入を減らす場合、第2期作トウモロコシの収量が低下するリスクがある。
2022/2023市場年度
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)による生産状況調査。
2022/2023年度 ブラジルのトウモロコシ生産予想(単位:トン)
1期作 2期作 3期作
2023年03月予想 1億2467万7,400トン 2675万8,000 9560万4,500 231万5,000
2023年02月予想 1億2374万3,800トン 2646万1,800 9496万7,000 231万5,000
2023年01月予想 1億2506万2,400トン 2646万1,200 9627万1,200 233万0,100
2022年12月予想 1億2582万7,700トン 2722万6,200 9627万1,200 233万0,100
2022年11月予想 1億2639万7,300トン 2815万3,300 9627万1,200 197万2,500
2022年10月予想 1億2694万1,500トン 2869万2,000 9627万6,800 197万2,500
2022/2023年度 ブラジルの大豆生産予想(単位:トン)
2022年03月予想 1億5141万9,400トン
2022年02月予想 1億5288万9,900トン
2022年01月予想 1億5271万2,800トン
2022年12月予想 1億5347万7,600トン
2022年11月予想 1億5353万8,200トン
2022年10月予想 1億5235万2,200トン
2021/2022市場年度
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)による生産状況調査。
2021/2022年度 ブラジルのトウモロコシ生産予想(単位:トン)
1期作 2期作 3期作
2023年03月予想 1億1313万0,400トン 2502万6,000 8589万2,400 221万1,900
2023年01月予想 1億1313万3,600トン 2503万0,400 8589万2,400 221万0,800
2022年10月予想 1億1280万5,200トン 2502万6,800 8562万2,400 215万6,000
2022年09月予想 1億1327万2.100トン 2497万9,700 8612万0,600 217万1,800
2022年08月予想 1億1469万1,300トン 2497万9,100 8740万6,700 230万5,600
2022年07月予想 1億1566万2,700トン 2480万4,600 8844万8,100 240万9,800
2022年06月予想 1億1522万3,100トン 2481万0,300 8801万5,800 239万6,900
2022年05月予想 1億1458万8,100トン 2467万5,800 8769万2,600 221万9,600
2022年04月予想 1億1560万2,100トン 2488万5,800 8853万5,500 218万0,700
2022年03月予想 1億1234万1,100トン 2433万1,500 8615万3,800 185万6,100
2022年02月予想 1億1234万2,800トン 2443万4,100 8605万2,800 185万6,100
2022年01月予想 1億1290万1,900トン 2478万6,500 8625万9,100 185万6,100
2021年12月予想 1億1718万1,500トン 2906万6,000 8625万9,100 185万6,100
2021年11月予想 1億1671万1,500トン 2860万0,600 8625万5,800 185万4,900
2021/2022年度 ブラジルの大豆生産予想(単位:トン)
2023年03月予想 1億2554万9,800トン
2022年10月予想 1億2554万9,800トン
2022年09月予想 1億2555万2,300トン
2022年08月予想 1億2404万7,800トン
2022年07月予想 1億2404万7,800トン
2022年06月予想 1億2426万8,000トン
2022年05月予想 1億2382万9,500トン
2022年04月予想 1億2243万1,100トン
2022年03月予想 1億2276万9,500トン
2022年02月予想 1億2547万1,300トン
2022年01月予想 1億4049万9,600トン
2021年12月予想 1億4278万9,900トン
2021年11月予想 1億4200万9,900トン
2020/2021市場年度
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)による生産状況調査。
2020/2021年度 ブラジルのトウモロコシ生産予想(単位:トン)
公表日 第1期作 第2期作 第3期作 合計の生産高
最終 2472万6,500 6074万1,600 162万8,500 8709万6,800トン
9月09日(2021) 2474万4,200 5947万1,500 153万3,300 8574万9,000トン
8月10日(2021) 2489万8,200 6032万2,000 143万0,100 8665万0,100トン
7月09日(2021) 2490万9,200 6697万0,500 150万4,700 9338万4,600トン
6月10日(2021) 2471万4,000 6995万7,600 171万7,300 9639万2,100トン
5月12日(2021) 2467万6,600 7979万9,400 193万7,300 1億0641万3,500トン
4月08日(2021) 2451万2,900 8260万8,100 184万4,700 1億0896万5,600トン
3月11日(2021) 2349万0,500 8280万2,300 177万5,800 1億0806万8,700トン
2月11日(2021) 2362万9,200 8007万6,600 177万5,800 1億0548万1,600トン
1月13日(2021) 2391万1,500 7676万3,300 163万8,300 1億0231万3,200トン
前年度 2568万9,600 7505万3,200 184万3,600 1億0258万6,400トン
2020/2021年度 ブラジルの大豆生産予想(単位:トン)
CONAB 作付面積(ha.) 生産高(mt)
最終 3919万5,600 1億3815万3,000トン
9月09日(2021) 3853万2,100 1億3591万2,300
8月10日(2021) 3852万9,000 1億3597万8,300
7月09日(2021) 3850万7,600 1億3591万1,700
6月10日(2021) 3850万6,700 1億3586万1,000
5月12日(2021) 3850万2,100 1億3540万8,800
4月08日(2021) 3847万3,000 1億3554万0,300
3月11日(2021) 3846万1,500 1億3513万1,600
2月11日(2021) 3826万6,300 1億3381万7,000
1月13日(2021) 3819万2,800 1億3369万2,300
前年度 3694万9,700 1億2484万4,800
2019/2020市場年度
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は2020年6月9日、2019/20年度(2019年10月1日~2020年9月30日)第4回目となる主要穀物の生産状況等調査結果を発表した。プラッツ社の記事から数字を拾い出したので、「千」以下が四捨五入されています。
ブラジルのトウモロコシ生産
作付面積 5月予想 6月予想
1期作 422万1700ha 2525万2400トン→ 2543万トン
2期作 1378万3000ha 7591万3300トン→ 7423万トン
3期作 51万1200ha 117万1000トン→
------------------------------------------------------
1億0233万6600トン→ 1億0099万トン
●2期作トウモロコシの下方修正について
6月の下方修正の理由を、プラッツ社は「The reduction in the production estimate is primarily
due to irregular rainfall and severe drought in some of the key corn
growing regions of Brazil.」と記しています。
●それでも史上最高記録です
ブラジルのトウモロコシ生産は「5月予想=1億0233万6600トン」から「6月予想=1億0099万トン」に下方修正されたものの、それでもブラジルにとって史上最高の生産量です。むしろ前回予想の5月が楽観的過ぎた分、6月予想で削ったとも言えます。今回の6月予想が「少ない」というわけではありません。
ブラジルの2019/2020市場年度のトウモロコシ生産予想推移
出所:ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)
2020年06月予想 1億0099万トン
2020年05月予想 1億0233万6600トン
2020年04月予想 1億0186万7900トン
2020年03月予想 1億0008万3300トン
2020年02月予想 1億0048万5900トン
2020年01月予想 9871万0600トン
2019年12月予想 9840万9300トン
2019年11月予想 9836万6100トン
ブラジルのトウモロコシ生産
出所:ブラジル国家食糧供給公社
2019/2020市場年度 1億0233万6600トン →1億0099万トン(6月予想)
2018/2019市場年度 1億0004万6300トン
2017/2018市場年度 8070万9500トン
2016/2017市場年度 9784万2800トン
現状の予想でも、ブラジルの2019/2020市場年度のトウモロコシ生産は市場最高記録です。ただ、5月予想のものすごい数字からは下方修正された。
Despite the latest downward revision to corn output, it would be still a record high as a lower yield was offset by a higher planted area.
ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)が6月8日時点で公表したところによれば、2期作トウモロコシの収穫進捗率は「9%」であった。このブラジルの2期作トウモロコシを、わが国は飼料原料として夏から輸入します。韓国も台湾も同じです。
ブラジル産トウモロコシの需給(MT)※このあと改定します
2016/2017 2017/2018 2018/2019 2019/2020
期初在庫 713万4,000 1786万6,200 1560万5,100
生産量 9784万2,800 8070万9,500 1億0004万6,300
輸 入 95万3,600 90万1,800 130万0,000
総供給量 1億0593万0,400 9947万7,500 1億1695万1,400
消 費 5721万3,400 6005万2,000 6391万5,300
輸 出 3085万0,800 2382万0,400 4150万0,000
期末在庫 1786万6,200 1560万5,100 1153万6,100