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米国の財政支出の拡大 新型コロナ対策

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米国の財政支出の拡大
財政支出の拡大は金利を上昇させる圧力を発生させる=開放経済においては他国からの資金の流入を呼ぶ=この資金流入によって金利上昇が抑制される一方で、変動相場制では自国通貨高を招く。

マンデル・フレミングの理論: 巨額の財政政策(財政出動の拡大)→ 財政赤字の膨張 → 長期金利の上昇 → 他国からの資本流入 = 自国通貨高(米ドル高)

新型コロナ対策 第5弾

「米国救済計画」(American Rescue Plan)

2021年3月6日 米上院で可決
「米国救済計画」(American Rescue Plan)修正法案

【アメリカ救済計画と大型インフラ刷新計画について】
米上院は週末3月6日に1兆9000億ドル(日本円で200兆円を超す)の財政支出法案を可決した。「アメリカン・レスキュー・プラン(American Rescue Plan)」(アメリカ救済計画)と呼ばれるこの法案は、米下院で2月27日に可決されたが、今回上院で可決されたのはその修正法案であるため、3月9日から下院であらめて審議したあと、3月14日までにバイデン大統領の署名を経て成立する見通し。

今回の現金給付は一人あたり1400ドル(約15万円)、年収7万5000ドル(約810万円)未満の人が対象になる。失業保険の追加給付は毎週300ドルの上乗せを9月まで延長する。州政府や自治体に3500億ドル、学校には1300億ドルを支出し、新型コロナウイルス検査の拡大や研究に490億ドル、ワクチン供給に140億ドルを支出する。パンデミックの打撃を受けているレストラン・バーへの支援金250億ドル、航空各社に150億ドル、空港に80億ドルなどを割り当てている。家計支援という観点から見ると、2020年3月~2021年3月までのあいだに、米国では成人ひとりひとりに「3,200ドル」(35万円弱)を配ることになった。

バイデン大統領は昨年7月、選挙公約として新型コロナ対策だけでなく、4年間で2兆ドルのクリーンエネルギーインフラ投資を発表している。電気自動車と高速鉄道に注力する考えを示しており、大型インフラ刷新計画の推進を計画している。しかし、今回のコロナ対策第5弾の大盤振る舞いで財政赤字が拡大することで、このあと年内に財政出動を2つ、3つ拡大することは難しくなったと思う。今回の新型コロナ対策(アメリカ救済計画)に加えて「大型インフラ刷新計画」を急ぐと、米連邦政府の財政見通しは一段と悪化する。

市場人気の多くは、米国の度重なる新型コロナ対策(財政支出)によって景気回復や需要増加を期待している。昨年(2020)11-12月以降、株や原油や穀物などが異常に高いのも、そのためだ。

しかし、金融緩和と財政出動が常に「景気回復と需要増加」一辺倒に働くわけではない。

財政政策の拡大は金利の上昇を招き、自国通貨高をもたらす。マンデル-フレミング・モデルを持ち出すまでもなく、財政支出が景気対策の重要な柱になるとき、金利上昇を通じて自国通貨高をもたらし、それによる設備投資の減少をもたらす。財政支出の拡大はそれ自体としては需要増加要因であるが、開放経済の下では、そのことが他の需要項目を減少させるというメカニズムが備わっている。

開放経済と変動相場制の下では、いいとこ取りだけができるわけではない。

米国でも高齢化による社会保障の増加がある。2020年3月~2021年3月のような、新型コロナ対策で洪水のような財政支出を毎年繰り出していくことは難しい。連邦政府の財政見通しは悪化し、金利はさらに上昇し、一段と米ドル高に押し上げることになる。

したがって、週末の米上院で1兆9000億ドル(日本円で200兆円を超す)新型コロナ対策第5弾を可決したことで、昨年12月から続いてきた最も大きな思惑要素が一巡した可能性が高い。

バイデン大統領のもう一つの財政政策である「大型インフラ刷新計画」はいますぐ、次の思惑要素として日程にのぼることはないと思う。したがって、3月第2週の相場が当面の山場になる。

債券、為替、株式、石油、穀物、海運などそれぞれの市場によって、そしてまた、それぞれのセグメントによって、山場を形成する時機に違いがあるかもしれません。海運のドライバルクで言えば、パナマックスとスプラマックスでは、ピークをつける時機が異なる。しかしながら、おおざっぱな全体観の観点で言うなら、今週3月8日~3月12日が当面の相場の山場と思う。

2021年2月27日 米下院で可決
「米国救済計画」(American Rescue Plan)

バイデン米大統領が提案した総額1兆9000億ドルの追加経済対策「米国救済計画」案には、新たな現金給付や州・自治体の財政支援、学校向け新型コロナウイルス対策費支援など、経済的・人道的な幅広い政策が盛り込まれている。現在、議会で審議されている主な予算項目は次の通り。

◎現金給付:4140億ドル
年間所得7万5000ドル以下の税金を払っている個人に対して新たに1400ドルの給付を行う。所得7万5000ドル超から10万ドルの層への給付は段階的に廃止する。

◎州・自治体支援:3500億ドル
新型コロナウイルスのパンデミックの影響で歳入が落ち込み、財政難にあえいでいる州と自治体への資金提供。警察や消防といった緊急業務対応、ワクチン配布などの費用に充当する。

◎子育て支援:1750億ドル
子どものいる世帯向けの税控除拡大のために880億ドル、育児関連の事業サービスと地域社会支援向けに484億ドル、育児と知育の包括補助金に390億ドルが拠出される。

◎教育関連:1700億ドル
小中学校と高校の安全確保や、教室のコロナ対策、その他教育に必要とされる費用を提供する。

◎失業保険上乗せ:1630億ドル
失業保険受給者は今年8月29日まで、連邦給付金が毎週400ドル上乗せされる。

◎医療関連:920億ドル
ワクチン調達・配布、他の医療機器整備、医療従事者や感染追跡担当者の新規雇用などの予算が増額される。

◎中小企業支援:500億ドル
「給与保証プログラム(PPP)」を拡充し、パンデミック中に収入を失った飲食店などへの助成金や融資を進める。

◎家賃補助:300億ドル
家賃や住宅ローン支払いが苦しくなっている世帯を援助し、ホームレスになっている人への支援も行う。

◎食料支援:35億4000万ドル
低所得者向け食費支援制度「補助的栄養支援プログラム(SNAP、旧フードスタンプ)」の給付金拡充が今年9月末まで延長される。

新型コロナ対策 第4弾(2020年12月21日)

米連邦議会は2020年12月21日、新型コロナウイルス対策の追加支援策を含む9000億ドル(約93兆円)の法案を可決した。家計対策と中小企業対策を重視した。現金給付や中小企業支援、ワクチン普及費などを盛りこんだ。3月以降に発動したコロナ対策は今回で第4弾、1~4弾の合計で4兆ドルと過去例のない巨額の財政出動となる。

今回の支援策は、2021会計年度(2020年10月~2021年9月)の歳出法案(1.4兆ドル相当)に付帯するかたちで策定された。法案は12月21日深夜、下院で賛成359票、反対53票(棄権17票)、上院で賛成92票、反対6票(棄権2票)で可決した。

◎現金給付:2度目となる現金給付は、成人・未成人ともに1人当たり600ドルが支給される。成人の年収(2019会計年度が基準)が7万5,000ドル超の場合は、所定の条件に該当する場合を除き、100ドルを超過するごとに5ドルずつ減額され、年収9万9,000ドル以上の成人には支給されない。

◎失業保険上乗せ:失業保険については、1週間当たり300ドルの追加給付を12月26日から2021年3月14日まで実施する。労働省によると、失業関連給付の継続申請総数は全米で2,036万件に上る(12月5日時点)。

◎家賃補助:住居の賃料支払い支援に250億ドルを確保するとともに、賃料不払いによる強制退去猶予措置を2021年1月末まで延長する。

◎中小企業支援:中小企業支援では、従業員への給与支払いを補填(ほてん)する給与保護プログラム(PPP)に予算の大半となる2,845億ドルが充てられる。PPPは新規申請とともに、従業員数300人以下の中小企業を対象に、2019年と2020年の各四半期の総収益を比較して25%以上減少している場合に2度目の申請を受け付ける。また、中小企業向けの融資プログラムの経済損害災害ローン(EIDL)に200億ドルが追加補填されるほか、演劇業界や芸術施設などへの緊急支援に150億ドルが確保されている。

◎税制措置:税制措置では、給与税の支払い義務の免除について、トランプ大統領が設けていた2021年4月末の期限を同年12月31日まで延長する。また、雇用維持のための税額控除について、有効期限の延長(現行の2020年末から2021年6月30日まで)や、控除する範囲の拡大(従業員給与の現行の5割から7割へ)などが行われる。さらに、有給の病気・家族休暇を取得した従業員への給与支払税の控除延長が盛り込まれ、PPPの返済免除額を税申告上の総収入に含めないことが明記された。

このほか、支援策には、ワクチン普及や州・自治体への検査・追跡などの支援、児童ケアの拡充、航空業界への支援などが盛り込まれた。旅客減が深刻な航空会社に150億ドルを拠出する。ワクチンの普及など医療体制の整備には690億ドルの資金枠を設ける。他方、民主党が要求していた州・自治体への補助金や、共和党が求める事業者への民事上の免責規定は合意に至らなかった。大統領就任が確実視されるジョー・バイデン前副大統領は、法案可決を歓迎しつつ、「始まりにすぎない」と述べ、新型コロナウイルス対応に関わる次期政権公約の実現に向けた協力を議会に求めた。産業界では、米国商工会議所や全米製造業協会(NAM)が支援策を支持する声明を発表している。NAMのジョーダン・ストイック副会長(政府関係担当)は「PPPの追加予算は引き続き、小規模の製造業者の命綱となる」と述べるとともに、検査やワクチンの普及、税控除などにより、企業の安全な操業が保証されると期待を示した。

第4弾 2020年12月21日 新型コロナウイルス対策の追加支援策を含む9000億ドル
第3弾 2020年3月30日 トランプ大統領、総額2兆2,000億ドルの救済法案に署名
第2弾 2020年3月24日 トランプ米大統領が第2弾の新型コロナウイルス対策法に署名
第1弾 2020年3月10日 トランプ米大統領、83億ドルの新型コロナウイルス対策予算法に署名

米国農家に対する追加支援策(2020年9月18日)

米国のドナルド・トランプ大統領は9月17日、ウィスコンシン州で開かれた選挙集会で、新型コロナウイルスの影響を受けた農家を対象とした追加支援策を発表した。トランプ大統領は演説の中で、「ウィスコンシン州の素晴らしい酪農家、クランベリーやチョウセンニンジンの生産者などの農家が新型コロナウイルスの影響から立ち直るのを手助けするために、来週から130億ドルの追加支援を開始する」と述べた。

トランプ大統領の発言の翌9月18日に、農務省は、農作物、畜産、酪農、養殖などの生産者を対象に、新型コロナウイルスに起因する損失を直接補償する総額140億ドルの追加支援プログラムを発表した。申請は9月21日から12月11日まで受け付ける。補助額は原則、1農家当たり最大25万ドルとなる。農務省は4月にも、「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障法(CARES法)」などに基づき、農家向けに190億ドルの支援策を発表している。このうち160億ドルは農畜産業者の実損失額の直接補償に、30億ドルは農務省による野菜や畜産物などの買い上げに充てられた。今回の支援策は、これに追加するかたちで導入されたものといえる。

●2020年7月4日 給与保護プログラムの申請期限を8月8日まで延長

トランプ米国大統領は2020年7月4日、新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業向けの支援策である給与保護プログラム(PPP)の申請期限を、当初の6月30日から8月8日まで延長する法律に署名した。これを受けて、同プログラムを所管する中小企業庁は米国東部時間7月6日午前9時から申請受付を再開した。

PPPは、3月27日に成立した「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(CARES)法」に基づいて導入された。一定の要件を満たせば、融資の全額または一部の返済が免除されるため、プログラム開始以降は申請が殺到し、4月半ばには財源が枯渇した。政府・議会は、その直後に財源を補填(ほてん)する法律を成立させ、プログラムを再開させた。

しかし、その後、事業者からは返済が免除となるための要件が現実に即していないとの批判が相次いだり、政府がいったん受給を認定した大企業に対して返納を要請したりするなど、制度運用の混乱がみられ、新規の申請は足踏み状態が続いていた。こうした状況を受けて、政府・議会は6月5日に、返済免除となるための要件を緩和する法律を成立させている。今回成立した法律は、単純に申請期限を8月8日まで延長するためのもので、制度の仕組みは6月5日の法律で変更した状態のままとなる。

PPPには6,590億ドルが財源として充てられている中、米国東部時間7月6日午後5時までに承認されたのが約5,212億ドルとなっており、約1,378億ドルが残っている状況だ。全米中小企業協会(NSBA)は7月2日の声明で、「新型コロナウイルスの感染者数が急増し、各州が経済再開計画を停止・延長している中で、PPPの申請期限延長は非常に重要なことだ」と政府・議会の動きを評価している。

●2020年4月23日 中小企業向け融資プログラムの予算拡充を含む追加法案

米議会下院は2020年4月23日、新型コロナウイルスによる影響への支援策として、中小企業向け融資プログラムの予算拡充を含む追加法案を可決した。上下両院で可決した法案はトランプ米大統領が署名予定で、施行されれば財源枯渇のため申請受入れを停止していた融資が復活する。また、トランプ政権はインフラや州財政などを支援する次の対策にも意欲を見せている。

法案は、下院で賛成388票、反対5票と、圧倒的多数の支持で可決した。法案に基づき拠出される予算総額は約4,834億ドルに上る。内訳は、中小企業向けの支援策である、給与保護プログラム(PPP)に3,100億ドル、経済的損害災害融資(EIDL)に600億ドルが補填されるほか、病院支援に750億ドル、ウイルス検査の強化に250億ドルが拠出される。残りはPPPやEIDLを運用する中小企業庁の人件費などに回る。

PPP予算は、第3弾の対策法で拠出された3,490億ドルから増額され、計6,590億ドルに達した。法案には、予算の補填に加え、民主党の要望として、地域開発金融機関などの小規模金融機関に600億ドルの融資枠を優先的に分配することが盛り込まれた。下院中小企業委員長のニディア・ベラスケス議員(民主党、ニューヨーク州)は、「JPモルガンやウェルスファーゴなどの大手銀行との取引関係がない、マイノリティなど十分なサービスを受けていない事業者が融資を受けられる」と評価している。FRBも、PPPに基づく融資対象に小規模金融機関を加える準備を進めている。

法案では、その他PPPに関わる制度変更は記載されていないが、EIDLについては、従業員数500人以下の農業事業者が新たに適用対象として追加された。中小企業庁ウェブサイトでは、PPPおよびEIDLの受付再開時期について、4月24日時点で情報は掲載されていない。

法案は4月21日に上院を通過しており、トランプ大統領も早期の成立を求めていたことから、すぐに署名する見込み。また、次の対策法案に向けた検討に掛かる旨を表明しており、4月21日の定例会見では、ムニューシン財務長官が、議会との協議次第としつつも、地方部の通信環境などインフラ支援、レストラン等の所得減税、州への財政支援の可能性に言及している。

新型コロナ対策 第3弾(2020年3月27日)

「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security)法」2兆2000億ドル

トランプ大統領は3月27日、第3弾となる新型コロナウイルス対策の救済法案に署名した。今回の措置は2兆2,000億ドルに上る米国史上最大規模の救済措置で、各世帯への現金給付や失業保険の拡充、民間企業支援などが盛り込まれた。

今回署名された「コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security)法」は、各頭文字から「CARES法」と略される。政権と議会の与野党指導部が法案に関わる協議を行い、3月25日に上院を満場一致(賛成96票、反対0票)で通過、3月27日に下院でも発声投票で可決された。

トランプ大統領は法案署名に際して、「米国史上最大の経済救済策に署名する」「2兆2,000億ドルの救済策となる」と述べ、支援は米国の家族、労働者、産業界に直ちに届くと伝えた。今回の救済策は、米国の名目GDP(約21兆4,277億ドル、2019年)の約1割に相当し、世界金融危機後の2009年にオバマ政権下で成立した7,870億ドルの経済救済法の規模。

個人・世帯への支援では、成人に1,200ドル、未成人(17歳以下)に500ドルが提供される。収入が一定額を超える場合は、世帯の家族構成などに応じて減額調整や権利喪失の対象となる。失業保険の拡充については、各州からの給付に追加して1週間当たり600ドルの追加給付を受けられる(7月31日まで)。米国ではホテルやレストランなどサービス業で失業者が激増しており、3月15日~21日の新規失業保険申請件数は328万3,000件に上る。

経済面では、米国連邦準備制度理事会(FRB)を補完する形で企業や州・自治体に融資や債務保証などを行う資金源として4,540億ドルを充てる。スティーブン・ムニューシン財務長官はFRBの資金拡大により4兆ドルの流動性が供給されると見込んでおり、トランプ大統領も署名式で「(最終的に)6兆2,000億ドル(分の景気刺激)となる可能性を秘めている」と述べた。その他、旅客・貨物航空会社(290億ドル)や「国家安全保障の維持上重要な」企業(170億ドル)にも直接融資が付与される。

中小企業向けには、3,770億ドルの予算が確保され、その大半が従業員の給与支払いのための融資に用いられる。中小企業(注1)は、1,000万ドルを上限に、全従業員の平均月額給与(基本給や健康保険料、年金積立金などを含む)総額の250%まで融資を受けられる。本融資の実施期間は2月15日から6月30日までとなる。その他、中小企業庁(SBA)が提供する融資の対象拡大や既存融資の一部債務免除などが盛り込まれた。

そのほかCARES法には、医療機関や州・自治体への支援、医療資材の確保などが含まれる。米国内の感染者数は引き続き増加しており、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党、カリフォルニア州)は医療費の無償化や傷病休暇の拡充など追加法案を検討すると表明している。

(注1)対象は(1)従業員500人以下の企業もしくは中小企業庁による小企業(small business)の定義に該当する企業、(2)個人事業主、(3)従業員500人以下の特定の非営利団体。

新型コロナ対策 第2弾(2020年3月18日)

「家族第一・コロナウイルス対応法」

トランプ米国大統領は2020年3月18日、議会が可決した第2弾の新型コロナウイルス対策法案に署名し、同法が成立した。「家族第一・コロナウイルス対応法」と題した今回の法律には、新型コロナウイルスの検査無償化や、従業員がウイルスの影響で休暇を取得せざるを得ない場合の所得保証などが盛り込まれている。

これより前に、第1弾として3月6日に成立した緊急補正予算法では、ワクチンの研究・開発や公共衛生機関への財政支援などが主要な内容だったが、第2弾の対策法では、個人への支援が主となっている。新型コロナウイルスの検査無償化については、無保険者向けの公的プログラムに資金を拠出するとともに、民間医療保険に被保険者の検査費負担を無料にすることを義務付けている。

今回の第2弾には、さまざまな新型コロナウイルス対策が盛り込まれているが、雇用主が特に考慮すべきものとして、以下の3つがある。

第1(休暇)は、1993年家族・医療休暇法(FMLA)を一部改正した「緊急事態家族・医療休暇拡大法」だ(条文のDivision C)。対象は、従業員500人未満の企業の従業員で、少なくとも30日の実績がある者。対象者がウイルスの影響で、(1)自己隔離する場合、(2)自己隔離する家族に付き添う場合、(3)学校等の閉鎖で子供に付き添う場合のいずれかに該当すれば、雇用主は最大12週間、雇用が保障された状態の休暇を与えなければならない。最初の10日間は従業員が積み立てた有給休暇もしくはその他の傷病休暇を利用し、それ以降の休暇期間において雇用主は従業員に対して、通常の給与の3分の2以上の給与を支払わなければならない。ただし、支払い義務の上限は1日当たり200ドル、期間全体で1万ドルとなる。本措置について、従業員50人未満の雇用主に対しては労働省が適用除外を承認し得る。

第2(給与保証)は、「非常事態有給傷病休暇法」(条文のDivision E)が新設され、上記改正FMLAの対象従業員に対して雇用主は、(1)正社員には80時間(2週間)の、(2)非正規の従業員には通常の2週間の平均的な勤務時間と同等の時間の有給傷病休暇を与えなければならない。いずれも従業員自身がウイルスの影響で休業した場合は通常の給与(ただし、支払い義務の上限は1日当たり511ドル、期間全体で5,110ドル)を、家族のために休業した場合は通常の3分の2の給与(ただし、支払い義務の上限は1日当たり200ドル、期間全体で2,000ドル)を支払う必要がある。本措置も従業員50人以下の場合、適用除外対象となり得る。上記2つの法はいずれも、法律成立から15日以内に有効となり、2020年12月31日に失効する。第3(税額控除)は、還付可能な税額控除が設けられた(条文のDivision G)。今回の第2弾対策法に含まれる「緊急事態家族・医療休暇拡大法」(条文のDivision C)および「非常事態有給傷病休暇法」(条文のDivision E)に基づいて、従業員500人未満の雇用主が休業した従業員に対して支払った給与分の100%が、四半期ごとに控除されることになる。控除対象となるのは、1986年内国歳入法が定める雇用主負担分の連邦社会保障税(注)となる。ただし、税額控除の上限がそれぞれ定められている。「緊急事態家族・医療休暇拡大法」に基づいて、雇用主が休業した従業員に支払った給与分については、従業員1人当たり1日200ドル、四半期全体で1万ドルが上限となる。

第3(税額控除)は、還付可能な税額控除が設けられた(条文のDivision G)。今回の第2弾対策法に含まれる「緊急事態家族・医療休暇拡大法」(条文のDivision C)および「非常事態有給傷病休暇法」(条文のDivision E)に基づいて、従業員500人未満の雇用主が休業した従業員に対して支払った給与分の100%が、四半期ごとに控除されることになる。控除対象となるのは、1986年内国歳入法が定める雇用主負担分の連邦社会保障税となる。ただし、税額控除の上限がそれぞれ定められている。「緊急事態家族・医療休暇拡大法」に基づいて、雇用主が休業した従業員に支払った給与分については、従業員1人当たり1日200ドル、四半期全体で1万ドルが上限となる。「非常事態有給傷病休暇法」に基づいて、雇用主が休業した従業員に支払った給与分については、(1)従業員自身がウイルスの影響で休業した場合は、従業員1人当たり1日511ド 、(2)従業員の家族のために休業した場合、同200ドルが上限となる。いずれの場合でも、本法で認められた税額控除分が、雇用主が負担する連邦社会保障税の総額を超えた場合、その超過分は雇用主に還付される。

このほか、今回の第2弾対策法には、低所得者向けの食料補助プログラムや、失業保険拡充のための各州への財政支援などが含まれている。また、トランプ政権は早くも第3弾の対策法案として、個人への直接の小切手送付や中小企業への融資、給与税の減税、特定産業の企業への補助などを含む経済刺激策の策定を米議会と調整している。

新型コロナ対策 第1弾(2020年3月6日)

新型コロナ対策 緊急補正予算法 83億ドル

トランプ米国大統領は2020年3月6日、議会上下両院が可決した新型コロナウイルス対策用の83億ドルの緊急補正予算法(H.R.6074)に署名し、同法が成立した。

米国内でも2月末以降、新型コロナウイルスによる死者も複数出るなど、感染が拡大している。トランプ政権は2月24日、議会に対して最低25億ドルの緊急予算を要求したが、議会民主党は不十分と批判していた。

可決された83億ドルの予算のうち、大きな額を占める項目には、ワクチンなどの研究・開発費用(30億ドル以上)、連邦・州・自治体の公共衛生機関への財政支援(22億ドル)などが含まれる。ビジネス支援に関しては、10億ドルを新型コロナウイルス拡大により資金的損害を受けた中小企業などへの低利融資に充てるとしている。また、4億3,500万ドルを外国の医療機関への支援として計上している。